どこにも書けないこと
真っ暗な部屋の中、窓の外からぼんやりとした明かりが入る。
カーテンを開けると雲の間から月が顔を出していた。どこも欠けることなく、優しい光を発するそれは小さく笑っているように見えた。
寂しがりが居るとこうして月は誰かを照らすのだろうか……。
月をただ見つめていると、次第に形が滲んでいき、ゆらりゆらりと揺れ始める。私の視界に小さな海が生まれた。しかし、すぐにそれはぽたりと落ちる。そしてまたひとつ、止まらず溢れ出ていく。
この感情を誰かに伝えることは一生ないだろう。きっと誰にも伝えられないだろう。それは私が怖がりだからだ。
だから今だけはどうか弱さを曝け出すのを許してほしい。
また明日も望まれる姿で生きられるように。
――情けない姿を見ても月は隠れず、泣き終えるまで私を照らし続けてくれた。
日々家
2/7/2024, 12:08:36 PM