「あ……」
ペンを取ろうと手を伸ばしたのに、ぼんやりしていたからか、指からこぼれ落ちた。
落ちていくはずのペンは床に落ちることなく、彼の手に収まっていた。そして、彼は身体を起こして太陽のような笑みを向けてくれる。
「落ちなくて良かった!」
その安堵した声と笑みに、私の胸が高鳴る。
違うと否定していたのに、その笑顔と優しい行動は私の心を捕らえて離さない。
「ありがとうございます」
上手く笑えただろうか。そう思いながら彼からペンを受け取る。
でも、その不安はすぐかき消された。
もう一度眩しいほどの笑顔を見せてくれたから。それと一緒に私の心臓の音もうるさくなる。
小さいことだけれど、そんなことが積み重なって否定できないくらいの気持ちが溢れてた。
好き。
伝える勇気はないけれど。
きっと言葉にできないけれど。
この想いは大切にしたい。
おわり
一九一、落ちていく
11/23/2024, 12:05:12 PM