〝 行かないで 〟
俺には幼稚園の頃から好きだった幼馴染が居る。
だが、本人は俺からの好意に気付いていない。
結局好意を伝えられることも出来ずここまで来て、今ではもう高校生だ。
彼女は頭が良いから、俺も必死に頑張って勉強をして、やっと同じ高校に入る事が出来た。
今年こそは告白をするぞって意気込んでいた。
周りの友人も、応援してくれていたんだ。
でも彼女は可愛いし、誰からもモテるような存在。
俺とは釣り合っていないんだ。
だから、だから。
彼女は別の男の所へ行ってしまったんだ。
俺に魅力がないから。釣り合っていないから、という事はちゃんと分かっている。でも、流石にここまで好意を向けているのに、なんで彼奴は気付かなかったんだろうな。鈍感にも程があるよ。
いつの間にか溢れていた涙を制服の袖で乱暴に拭い、いきなり泣き出した俺を驚愕の表情で見つめる彼女に対して俺は笑顔を向ける。
その笑顔が貼り付けただけの、心からの笑顔では無いことに、彼女は気付いていたのだろうか。
まあ、今となってはどうでもいいことだ。俺はもう彼女のことは諦める。
でも、でもさ、最後にこれくらい、言っても許されるよな?
「 俺から離れていかないでよ …… 」
俺の、最初で最後のワガママに。
彼女の瞳が、大きく揺れた。
今更後悔しても、もう遅いのにな。
10/24/2024, 1:54:08 PM