やめて 見つめないで
黒い瞳が私を見つめる。
雷鳴のような唸り声に思わず身体は震えていた。
「来ないで…」
思わず漏れた抵抗の意。だがそれは臆することなく、伸縮性に富む足を伸ばし、
私の腕に触れる。
動けない、このままだとまずい。
顔が迫る、深淵のような瞳がじっと見つめる
ああ… もうだめだ。
「かわいいなぁ!お前はなぁ!!」
思い切り抱きしめる。
ああ、なんというもふもふ具合か。
彼女はゴロゴロと喉を鳴らして、なでなでを所望する。摩擦熱で手が燃えるのではないかと思うほどになでまわす。
冬毛特有の温もり、素晴らしきかな我が人生
「ああ、まずい!」
そろそろ会議の時間なのだ。
彼女をゆっくりと床に下ろし、
私は急いで椅子についた。
『見つめられると』
3/29/2023, 10:11:53 AM