夜も深まる22時。
「……人が、多い」
こんな夜にも関わらず、丘の上の展望台は人々で賑わっていた。
「そりゃ当然だろ、委員長。なんたって『30年に一度の大流星群』だぜ? こんな貴重な機会、みんな見たいに決まってる」
私の小さなつぶやきに、君は、てきぱきと望遠鏡を組み立てながら答えた。
ーーいっしょに流星群を見に行こう。
そう誘われた時は、心が躍った。
星いっぱいの夜空をふたりじめ……なーんてロマンティックな想像をしながら。
だから、目の前に広がるお祭りみたいな光景に、少々がっかりした。
でも。
流星群を待ち侘びてはしゃぐ子どもたちの声。
お互いに「寒くないか」といたわりあう老夫婦。
他にもさまざまな人々の姿が見える。
単純な私は「こういうのも悪くないかも」、なんて思うのだった。
「そういえばさ、〇〇君と一緒に来なくてよかったの?」
ついでに気になっていたことを尋ねると、君はこちらも見ずにこう答えた。
「……委員長と、2人で来たかったから」
「……えっ?」
その時あたりから、わっ、と歓声が上がった。どうやら、流星が見え始めたようだ。
特別な夜はこれからだ。
『特別な夜』
1/22/2024, 9:51:40 AM