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ブランコ


キィ、キィ

油が取れているからか、金属同士が擦れ、音がする。
甲高い音が、耳に嫌に反響して背筋がざわつく。

まただ。あの公園のブランコはいつもそう。
風もないのにキィ、キィ揺れるのだ。

私はいつも気がつかなければよかったと思いながら通り過ぎる。
不思議なものは触らないに越したことはない。

キィ、キィ

ほらまた呼んでいる。
気になるという好奇心を抑えつけ、
通り過ぎなければならない。

視線をブランコから逸らし、前を向く。
キィ、キィ。音はまだ、止まない。

足早に公園の外側の道路を通り過ぎる。
キィ、キィ。嫌な金属音は、聞こえない。


聞こえない。そう。聞こえないんだ。
こんなことあったか?ブランコはどうなっているんだ?
安心感を得るためか、揺れていないであろうブランコを見ようと、私は足を止め振り返ろうとした。

まて、本当に振り返っていいのか。
押してダメならというやつなのではないか。
そんな疑心暗鬼が心に住む。

考えても仕方がない、ブランコのことは考えず、家に帰ろう。
私は振り返ろうと止めてた足を家へと進める。

キィ、キィ。

私を待っていたかのように、あのブランコはまた、軋み始めた。

2/2/2024, 5:03:09 AM