『あなたのために』
少し癖のある硬い髪質だから、所々にツンツンと飛び出した寝癖は中々直らない。しかもほぼ真横に2つのつむじが並んでいるからなおさらだ。
もうひと月くらいかな。刈り上げた坊主頭は成長期もあってかすでに黒々としてしまって、かなり短めのショートヘアのようだ。だから余計に寝癖が目立ってしまって見かける度に笑いながら手櫛で整えているの。
丸顔でふっくらとした輪郭は幼さを演出し、笑うと糸のように細まる目元は優しく、ころころと感情に合わせて変化する表情は愛嬌たっぷりでいつまででもみていられる。
言葉はなくとも、その首の僅かな傾きや気まぐれに差し伸べられる柔らかな手で呼ばれているのがわかる。
視線を合わせて手を握れば、ふわりと花がほころぶような笑みで迎えてくれる。
それがどれだけ嬉しいことか、知っている?
あの子が私にくれたものにお返しをするのならばね。
私からあの子へ、『愛』言葉を贈ります。きっとずっと終わらない私の言葉を、気まぐれなあの子が受けとってくれますように。
【題:愛言葉】
10/26/2023, 1:00:05 PM