空に広がる灰色の雲
顔も声もその雲と一緒にどんよりしてしまう
人通りのない住宅街
十字路を曲がろうとした時、後ろから声をかけられる。
あのうざい、ストーカーの声だった。
「こんな呑気にお散歩してていいのかにゃぁ?」
首輪についている鈴のような声だ
振り返ると、そこには予想通りの人物がいた。
白く短い髪に頭から生える二つの白い猫耳
猫と同じ瞳孔の黄色い目
首には赤いチョーカーに銀色の鈴
おまけに猫のような細い尻尾をふりふりと揺らしている
「おまえか猫女 なんのようだ」
「なんのようもクソもないにゃ 言葉通りだにゃ」
「俺は呑気にお散歩なんかしていない。ミッション遂行中だ、さっさとどっかいけ。しっし」
邪魔だと手を振るが猫女は見向きもしない
「ふーん それって、自殺者増加の調査のことかにゃ?」
「…そうだよ、原因が想背者の可能性が高いから、わざわざ俺が出向いて潰しに来てやったんだよ。」
さっさと会話を終わらせたいあまりに、無意識に足が進行方向に向いてしまう。
「じゃあお前はバカにゃ」
「あぁ!?なんだとてめぇ」
「犯人はもうここにいるにゃ」
「は…?」
「気づいてないのかにゃ?」
俺が意味がわからない顔をしていると、猫女は不気味に笑いながら頭上を指する。
「この雲、本物の雲じゃない。想背者にゃ」
とっさに頭上を見上げる
先ほどまで普通の雲だと思っていた雲は、もくもくと異常なスピードで顔の形を作り出す。
バレてしまったかと言っているかのように、鳥肌を立たせる不気味な笑顔を浮かべた。
お題『雲り』×『戯猫』
3/23/2025, 11:20:05 AM