宮平和実

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「好きな色」

 昔、学生の時、友達と好きな色の話になった。
「あたしは、オレンジとか明るい色が好き」
 友達が言った。
「私はグレーとかシンプルな色が好き」 
「えー。あたしは、グレーとかは嫌だ」
 私は好きな色を否定されて、ショックだった。
 今は思えば、その友達とは価値観が違っていた。
 学校を卒業後、その友達とは会っていない。
 その出来事から、自分の好きな色や物を人に話す事をやめてしまった。

 私は、仕事帰りに公園のベンチに座っていた。
「はぁ。なんで昔の事、思い出したんだろう」
 ため息が出た。
「やぁ!」と声をかけられた。
 隣の家のお兄ちゃんだった。
 昔から、家族ぐるみで仲が良く、私が小さい頃はよく一緒に遊んでいた。私が学生の時は、勉強を教えてもらっていた。
「お兄ちゃん」
「ため息をついている君がいたから、何かあったのかなと思って」
「お兄ちゃんは優しいな」
「隣座ってもいいかな?」
「どうそ」
「昔の事を思い出したんだけなんだ」
 私は話を切り出した。
「そっか。聞いてもいい?」
 私は、好きな色を否定された話をした。
 お兄ちゃんは、親身に話を聞いてくれた。
「それは、辛いね」
私はコクリと頷いた。
「俺も好きな色や物を否定されたら、ショックだよ」
「グレーとかシンプルな色が好きな君のままでいいと俺は思う。だって、誰かと合わせると疲れるだろう?」
「そっか。私のままでいいのか」
「うん」
「アドバイス、ありがとう」
「いえいえ!」
 誰かに、相談する事で、心が軽くなる事があるんだなと私は思う。
「あっ、そうだ!おかずを作りすぎて困っているから、君も久しぶりに俺ん家でご飯食べていかない?」
「うん!」
 私達は、公園を後にした。
 お兄ちゃんの家で、食べたおかずは、とても美味しかった。たまにはこんな日もいいかなと私は思った。



6/21/2024, 1:36:25 PM