宵街

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 潮風に飛ばされないように麦わら帽子を押さえる君を、真っ白なカンバスに書き写す。体が弱い君はよく海に行きたいと駄々をこねて泣いていた。自分の体の弱さを呪うほどに。

 今日は念願の海だ。君は子供みたいにはしゃぎまわって楽しそう。この日を忘れないようにとこの瞬間を切り取るのだ。

 また来年来ようね!と笑うその顔が、いつか来る日に失われる前に。

28.『麦わら帽子』

8/11/2023, 12:05:29 PM