小学生の冬、私は足元にあった氷の破片のような雪玉を同級生に投げつけた。向こうにちょっかいを出されたと思うが覚えていない。だが、当時の私は相当怒り狂っていたようで、氷の投球に相手の顔の一部を切ったらしい。
彼は、牙を剥き出した狂犬を目の前に怯えて死にそうな顔をしていた。そんな顔を見て正気になった私は、ただただ大声でごめんと叫んだが、相手は泣きながら逃げていった。私の耳の中では謝る声は響いているのに、辺りに積もった厚い雪のせいか、彼の耳には届かなかったのだろう。
おそらくあの日から私が転校するまで、私物の上着に悪口をペンで書かれるようなイジメが、私の知らぬところで行われていたと考えられる。そんな事実に、人の見えてはならない裏側を覗いてしまった不快感を覚えた。
だがそれよりも、私の中に古から研がれてきた殺意がちゃんと存在し、ちょっとした弾みで人さえもあやめられるのだなと小さな勇気の目覚めに気持ちがたかぶった。
(250127 小さな勇気)
1/27/2025, 12:40:00 PM