喜村

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 俺はこの春、ニートになった。
四月に新卒入社して、五月の大型連休明けから出社拒否して、現在にいたる。
 親には伝えていない、伝えられない。
だから、いってきますと朝に家を出て、誰も来ない公園の草むらで寝そべっている毎日をすごしている。

 草のちくちくとした感覚と、たまに蟻か何かの虫が腕をよじ上ってくる感覚がある。
 草の青臭さと土の湿った匂いがある。
 目を閉じると、この腐った世の中を忘れて、風を感じる。
 大の字に寝そべって、今日も大地に吸い込まれていた。

 そしてだんだんと眠くなる。夜も寝たのに、心地よい眠気が襲ってくる。
 真昼の夢は、ちょっとの罪悪感と、勝ち組のような幸福感に包まれておちていった。


【真昼の夢】

7/16/2025, 10:30:17 PM