チロ

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水垢一つ無い、きれいな鏡。
そこに映る自分の口元を見ながら、赤い、グロスを付ける。
鏡に映る自分は、滑稽で、汚くて、嫌悪感しかない。


私は、自分が大嫌いだ。
親からも「可愛くない」と言われてきた。
兄からも、「汚い、死ね」と何度も言われた。
自分が可愛くないことなんか、自分が一番分かっている。毎日鏡の中に映る自分を見ているのだから。



でも私は負けず嫌いで、結構心は強い方だと思う。
卑屈になんてなってやらないし、誰からどれだけ貶されて、消えてしまいたいと思っても、その度に自力で這い上がってきた。時間をかけても、必ず心を保ってきた。



落ち込むたびに、図書館に通って漫画や小説を読む。
私の想像する、本の中の主人公は、だいたい可愛くて、困難があってもそのままの自分でいる主人公を愛してくれる人が現れた。
本にのめり込んでいると「私にもいつか…」なんて、憧れの気持ちが湧いてくるのだけれど、現実はそう上手くいかないこともわかってる。

でも、本の中の主人公を目指したくて、毎日少しだけ努力してきたつもりだ。清潔感を保つために、石鹸から見直して、お化粧やファッション、ネイルもしたし、エステも行ってみた。美容院だって何件も回って良さげなところを探してみた。
でも、どれだけ「キレイ」を目指しても…
鏡の中に映る自分を好きにはなれない。


私が一番、よく分かってる。
「でも、諦めたくない」とまた本の世界にのめり込む。


繰り返す、厄介な感情。
鏡をみるたびに思い出す、過去に言われてきた罵り。



負けない、負けない。


「今日も、きれいになれた」


嘘でもいい。精一杯の笑顔を鏡の前で作る。
誰からも愛されないなら、私だけでも私を愛してあげないと。


鏡に映る私は、昨日より少しでも、きれいになれたかしら。








8/18/2024, 12:43:46 PM