ゆんたろす

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-秋晴れ-


からっとした秋の昼下がり、デビルズパレスの庭には色とりどりの落ち葉が地面いっぱいに広がっていた。
いつものように屋敷に来て、窓から外を見ているとノックの音が聞こえた。
返事をすると開くドア。ドアの向こうには本日の担当執事が出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、主様。今日は早いお帰りっすね」

『今日はアモンが担当なんだね。よろしく。』

軽い挨拶を交わし、今日の予定についての説明が始まる。
仕事のし過ぎでぼやぼやしている頭に、アモンの声が全く入らず
また窓の外に目を移すと、いち早く私の不調を察したアモンがブランケットを取り出した。

「主様、働きすぎっすよ」

ふわっとブランケットが私を包む。
アモンの匂いがする布に包まれて、思わず笑みがこぼれる。

「なーに笑ってるんすか」

『ふふっ、なんか、癒されるなぁって』

疲れている時は自分の心に素直に。これはアモンやほかの執事たちとの約束事で、習慣づいていた。
私が素直な言葉を言うと、アモンは少し照れたような顔をした。
他愛もない話をしていると、またノックの音が聞こえた。

「失礼いたします。主様、お帰りなさいませ。」
『ハウレス、ただいま。』
「少し、アモンをお借りしてもよろしいでしょうか?」

ハウレスはアモンに用があったようだ。
二つ返事をしてアモンとハウレスを見送ったあと…私はブランケットに包まれたまま布団にダイブした。
日頃のオーバーワークによる眠気が限界だったのである。

アモンの匂いに包まれながら、眠りに落ちてしまったため
私は窓の外の黒い影には全く気づかなかった。


ーーー……様
ーーーるじ様

「主様……」
『……ん……ごめ…寝てた』

いつまで寝てしまったのか、ブランケットに包まりながら起き上がるとアモンが戻ってきていた。
何時か問うと30分も経っていないとのこと。

「起こしてすみませんっす、主様。…今から庭に出ませんか?ご用意しているものがあるっす」

いつもだったら日がどっぷり沈むまで寝かせてくれるアモンが起こすのなんて珍しく、眠い目を擦りながら快く了承した。
外は寒いから、とアモンがマフラーを用意してくれたがブランケットを手放さない私に、嬉しそうにため息をついた。

アモンに連れられ庭に出ると、落ち葉がこんもり山を作っていて、ぱちぱちと音を立てながら綺麗な火をあげていた。
周りにはデビルズパレスの執事たちが勢揃いしていた。


『わ、焚き火!綺麗…』
「喜んでいただけて光栄っす」
「お待ちしておりました、主様」

ベリアンが挨拶をし、後からほかの執事達が続く
みんなの服装も執事服ではなく、オータムカラーのセーターや、シャツ、ジャケットを着ていた。
そういえば、アモンもいつもの執事服ではなくオータムカラーのセーターを着ている。


「主様!今日は焼き芋パーティーっすよ!」
「主様~見てくださ~い!綺麗な紅葉を見つけたんです~!」
「主様、本日も素敵なお姿を拝見できて幸せです」

主様、主様、と次々に執事たちが声をかけてくれて、驚いていると

「皆、主様に会いたかったんすよ」

とアモンが耳打ちしてくれた。

ハウレスが皆を制すると、庭のテラスへ案内される
テーブルには紅茶のセットとまだ湯気が立っている焼き芋が皿に乗せられていた。

「アフタヌーンティーとして少々不格好かと思いますが、焚き火を見ながら是非お楽しみください」

ハウレスがそう言うとベリアンが紅茶を注いでくれた。
お礼を言い、焚き火の方に目をやるとラムリが落ち葉を撒き散らしてナックが怒っていたり、バスティンが軍手をせずに焼き芋を取ろうとしてロノに止められていたり、
ラトとフルーレが焚き火を仲良く見つめていたり、
各々が自由にしてるのを見て、こんな時間がずっと続けばいいのに、なんて思った。
フェネスが追加の落ち葉を持ってきた時につまづいて空にふわっと落ち葉が舞った。

『……綺麗』

「ふふっ…主様、パーティーは楽しんでいただけていますか?」
私の反応を見たベリアンが尋ねる。
『すごく素敵なパーティーだよ。ありがとう。』
「それは良かったです。実はこのパーティーの企画はアモンくんなんです。」
『アモンが?』

てっきり、ロノ辺りかと思っていたけど、アモンが企画したということを聞いて驚いた。

「最近、主様が窓の外を見ることが多いとアモンくんに相談されたんです。」

主様はお疲れですと窓の外をぼんやり眺めることが多いので
と言うベリアン。周りの執事たちも各々自由な行動を取っていたが、気づくとチラチラとこちらの様子を伺っていることに気づく。
確かに疲れていると気づいたら外を見ることが多かったが、みんなそこについて触れてこなかったし、気づかれていないと思っていた。

『気を使わせちゃってごめんね。』
「いいえ、私たちも主様と過ごす時間が息抜きになるので、このような企画を立ててくれたアモンくんに感謝ですね」

ベリアンの視線の先にはボスキの世話を焼いているアモンの姿が見えた。私もそちらを見るとすぐに気付いたアモンはボスキと何かを話してこちらを向き、笑顔で手を振ってくれた。
ボスキは無表情だったが手を振ってくれていて、嬉しくて2人に手を振り返した。

仕事が辛くても、帰る居場所がここにあるんだ、なんて少し肌寒いこと考えながら紅茶を啜る。
ふわっと優しい風が通り、木からまたひらひらと色付いた葉が落ちてくる。ゆったり弧を描くように沢山の葉が落ちる中に彼らが迷い込んだようなそんな光景をみて空を仰いだ




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aknk

10/18/2023, 1:09:23 PM