unknown

Open App

前略
春の雨が静かに降り、桜の花びらがひとひら、またひとひらと地へと落ちてゆく様子を眺めておりますと、なぜだか貴方と会えぬ日々のうちに、少しずつ心細くなってゆく私の心に似ているようで、思わず笑ってしまうのでございます。

本当は、このような手紙に私の想いなど交えないで、ただ穏やかな日々のことだけを綴れたならよいのでしょう。けれど、それではどこか味気ないように感じられてしまい、気がつけば筆はいつも貴方のもとへと向いてしまうのです。

貴方とまみえない時間は、思っていたよりもずっと寂しいものですね。差し支えないふりをして、何でもない顔で日々を過ごしておりますけれど、本当は少しだけ、いいえ、ずいぶんと、貴方を恋しく思っております。

ここまで誰かを想うなど、昔の私に話したなら、きっとありえないと笑われてしまうでしょう。けれど今では、この気持ちを手放すことの方が、よほどありえないことのように思えてなりません。

もしも、この想いが貴方と相容れないものであったならその時の私は、どのような顔で日々を過ごしていたのでしょうか。このように筆を執ることも、きっとなかったことでしょうね。

どうかこの手紙も、何気ないものとしてお読みくださいませ。けれど、ほんの少しだけ、貴方に甘えてしまっている私のことを、微笑ましく思っていてくださいな。

まだ春とはいえ、冷える日もございますゆえ、どうかお身体を大切になさってくださいませ。
草々

3/30/2026, 12:52:19 PM