太陽が消え、永遠に暗い夜が続く空。
夜の魔王が太陽を封印し、空を支配したのだ。
ずっと夜が続き、外で遊べなくなった子供達は太陽を取り戻すべく、親が寝ている隙に、夜の魔王がいる魔王城へ向かった。
夜の魔王城は、まるでお化け屋敷のような不気味さで、子供達は怖くてなかなか城の中へ入る勇気が出ない。
「ぼくが先に入るから、みんなついて来て!」
一人の男の子が、先頭に立ち、扉を開けて城の中へ進んでいく。
子供達は男の子のあとに続いて、城の中へ入った。
城の中は薄暗く、明かりは壁に灯されている松明の火のみ。
男の子は松明の火が続く廊下を、先頭でどんどん進む。
あとに続いて歩く子供達は、勇気ある男の子を勇者と呼ぶようになった。
子供達はひたすら歩き、ようやく夜の魔王がいる王座の間に辿り着く。
奥には、夜の魔王が足を組みながら大きな椅子に座っている。
「よく来たな……って、大人ではなく子供が来たのか。まぁいい。子供であろうと容赦は──」
「みんな!とつげきだぁー!」
「わあああ!!!」
夜の魔王が語り終わる前に、子供勇者の合図と共に子供達は走り出す。
廊下の途中で拾った松明の木の棒を武器に、子供達は夜の魔王を叩いたり、殴ったり、突いて攻撃した。
「たいようをかえせ!夜のまおー!」
「お前のせいで、外であそべなくなったんだぞ!」
「こうさんしろー!」
子供達は何度も何度も、手加減なしで夜の魔王に攻撃する。
「分かった……!分かった!太陽は返す!だからもうやめてくれ!いてぇ!」
夜の魔王はあっさり降参し、太陽を封印したクリスタルを子供達に渡す。
子供勇者が封印を解くと、窓の外から光が射し込んできた。
空には太陽が現れ、光が地上を照らしている。
長い長い夜が、明けた。
「夜のまおー、はんせいしてもらうために、このクリスタルの中に入ってもらうぞ」
子供勇者はクリスタルを夜の魔王に向けて言った。
「そんなことをすれば、今度は永遠に夜が来なくなるぞ。それでもいいのか?」
「えいえんに夜が来ない……?」
夜の魔王の言葉を聞いて、子供勇者と子供達はニヤっと笑う。
「ま、まさかお前達……待て、早まるな」
夜の魔王は後退りし、逃げようとしている。
子供勇者は迷うことなく、クリスタルで夜の魔王を封印した。
「これでずっと外であそべるぞ!」
「やったーーー!」
永遠に夜が来なくなり、子供達はずーーーっと外で遊びに遊びまくった。
親という真のラスボスがいることを忘れて……。
4/28/2025, 11:44:01 PM