山を歩く。静かで緑しかないこの場所に私は一人だ。
その事実に不安が少し込み上げてくる。何を弱気になっているんだ。私は覚悟を決めてここまで来たんだ。
ずっと耐えられなかった。仕事ができないと小言を毎日言われ続け、押し付けられる日常に私は疲れていた。
そして、私は一つの答えを出した。
今から、死のうと。そうするために夜が明ける前に車で
崖がある山へ向かい、歩いていた。
少しずつ目的の場所へ近づいている。空が明るくなった
時、私はようやく辿り着いた。
そこには、眩いほどの朝日に包まれた海があった。
その朝日の優しい温もりが私を包み込む。
「──っ、ああ。」
この景色を見たら。この温もりに包まれたら。
死にたいなんて思えなくなってしまった。
「生きたい。生きたいよ。」
朝日に照らされながら私は暫く動くこともできずにずっと休みなく泣き続けた。
『朝日の温もり』
6/10/2023, 5:34:33 AM