蓼 つづみ

Open App

冬の空気の冷たさが光を研ぎ澄まして、
十二月の夜の並木道は化ける。

普通の白熱灯が氷片を溶かす小さな暖炉のように燃え、

ただの窓明かりが物語の入口のように灯り、

イルミネーションは、
星座を地上に引きずり下ろしたように光る。

いつもと同じ街なのに、
本来の姿から逸脱して姿を変えるのは、
季節の魔術と呼べるだろう。

街の灯りは幸福の痕跡であると同時に、
誰かがひとりで立ち尽くす時間をも映し出す。

痛みや孤独、迷い、沈黙、
光はそれらを消し去ってはくれない。
ただ、物語がそこに静かに存在していることを淡々と照らし続けるだけだ。

夜が深いほど、帰宅して灯す一灯の温度が宝石のように光って見える。
闇と光は対立しているのではなく、
ただ、どちらかが欠けると、もう一方も形を失う。

だから、光を見つめるとき、同時にその裏側にある影も意識してしまう。

影が揺れていても、その先には必ずどこかに淡い灯りはある。光は影に寄り添う刹那に呼吸をし、影は光へ還る前に身じろぎを見せる。二つが呼応し合い、溶け合い、歴史が積み重なって一瞬の輝きを形づくっている。

その輝きが集まって、硝子片を散らしたような、あの綺羅めく街並みは出来ているんだろう。

だからこそ、胸の奥を静かに締めつけるような感覚が生まれるのかもしれない。

私の知る“希望”とは、決して眩しく華々しいものではなく、
暗がりを手探りしたときにみつける、底光りするような力のことだ。

世界には孤独も沈黙もある。
―――それでも光はあるんだよ。

題 きらめく街並み

12/6/2025, 4:19:25 AM