『混じる色』
キャンパスに色を乗せる。横に筆を動かすと掠れながらも色がついてくる。
赤、青、ピンク⋯とあの人たちのイメージ色を丁寧に丁寧に描いていく。
「はぁ…」
いつも絵を描く時は自分でもわかるぐらいご機嫌なのに、今はため息ばかり出てしまう。キャンパスを目に入れることも少し億劫に感じてしまっていることに気づき、グッと筆を持つ手に力を入れる。
何故絵を描いているのかというと、頼まれたからだ。我らがヒーローに。私の彼氏は、地球の平和を守るヒーローだ。そんな彼氏を誇りに思うと同時に、やはり、劣等感なども抱いてしまう。デートなんてそうそう出来ないし、デートが出来たとしても敵が現れたらそっちに向かってしまう。しょうがないとはいえ、悲しい気持ちはある。それに私たちの関係を知った人から悪意を向けられる事も多々あるし、酷い言葉を直接かけられることもある。これを彼氏に相談したことはない。ヒーローである彼にこれ以上重荷を掛けさせたくないのだ。
それでも、辛いものは辛い。見ず知らずの人に暴言に近い言葉を言われるのも、それに気づいてくれない彼にも。彼は何も悪くないのに心の中で八つ当たりする。そんな自分が嫌になって自己嫌悪する。最近はその繰り返しだ。ストレスのせいか最近は眠れる時間も少なくなってきてしまった。
ふらりとよろけながらもキャンパスの前に立つ。
「完成させなきゃ。私たちの⋯私のヒーローを」
汚くなったパレットから色を取り、キャンパスに叩きつける。滴り落ちる濁った雫が私の心を表しているようだった。
「もうすぐだよ、お母さん」
【色とりどり】
1/8/2026, 4:48:37 PM