「力を込めて」
必要以上に、力を込めていたかもしれない。
疲れている友人のヤケっぱちな様子に付き合って、こんな時間まで外に出ていた今日。
数時間前の私は、疲れているからって私への当たりが強いのは、いかがなものか、と内心むかむかしていた。
私と彼女お気に入りの店。
ヘンなテンションの彼女は、ちびちびグラスに口をつけながら、喋る喋る。
「そんなやり方してるからできないんだよ。あのやり方を使ったほうが絶対良いって、誰々も言ってたんだから。これだから、要領悪い人ってのは、もう……。」
な、ん、で、あんたにそんなの言われなきゃいけないのよ!こないだ自分も失敗してたけど忘れたの!?
心の中はぐつぐつだ。でも、忘れちゃいけない、私はこの前愚痴を聞いてもらったのだ……。等価交換、つまり貸し借りはプラマイゼロにする。私達の暗黙の了解。
彼女と別れた帰り道、暗闇な空に叫んだ。
「なーんで、迷惑かけてもちっとも気にしてこないのよ、あいつは!
こっちは気を使いまくったんだけど!!
ばーかーやーろー!!」
……えっ?
そもそも、人に迷惑って絶対かけてはいけないこと?
どうせ、気をつけたってかけてるのに?
友達にまで、疲れたときにまで、全て押しのけて優先するくらい、大切だった?
ちょっとくらい、2人きりのとき友人にくらい、かけたって、そんなに悪くは無いんじゃない?
走馬灯ってこんな感じかなってくらいの速さで疑問が頭にぽこぽこ浮かんだ。
「別に、たまにはいっか」
友人にちょっぴり迷惑かけるくらい。
そのくらいご愛嬌ね、と許せる関係が私の望む友人関係だったはずだ。忘れてた。
「私、誰にも迷惑かけちゃだめだって、力を込めすぎてたかもなあ」
まあ、今日さんざん迷惑かけたあいつには、今度たっぷり仕返ししてやろう。なーんて。
10/7/2024, 10:48:51 AM