未知の交差点  どこまでも  LaLaLa GoodBye  梨  です。
未知の交差点
「ふふっ」
キミと、お家デートと称してのんびりしていると、キミが急に笑い出す。
「どうしたの?何か面白い記事でもあった?」
ソファに座り、テレビゲームをしている僕の隣で雑誌を読んでいるキミ。何か面白い記事でも載っていたのだろうか。と思って聞いてみると
「ううん、そうじゃなくて」
キミは雑誌をパタンと閉じ
「あなたと出会えて幸せだな。って思って」
と、言う。
「え?」
その言葉に、ゲームを中断して振り向くと
「だって、それぞれが違うことしてるのに、一緒にいられるだけでいい。そう思えるあなたと出会えて、私ってば幸せ者でしょ」
ふわっと微笑む。
「歩いてきた道が少しでも違ったら、出会わなかったかも。って思うと、余計に幸せを感じるよ」
幸せそうに笑顔を向けるキミに
「そうだね。でもさ、先の見えない分かれ道。未知の交差点に何度ぶつかっても、俺たちならきっと、同じ場所で出会えたと思うよ。赤い糸に導かれてさ」
微笑むと
「…うん」
うれしそうに、抱きついてくる。
「大好きだよ。ずっと一緒にいようね」
僕はキミの髪に、そっとキスしたのだった。
どこまでも
小さな音が、大きい音のように響く薄暗い場所。お化け屋敷に、キミと来ていた。
「お化け屋敷。初めて来たけど、中って結構暗いんだね」
「………」
「歩く速さ、これくらいでいいかな」
「………」
お化け屋敷に行きたい。とキミが言ったのに、怖いのか、僕の腕にギュッとしがみつき、何も話さない。
「先が見えない。って、怖いし不安だよね。けど大丈夫だよ」
背中をポンと叩くと
「あなたが守ってくれるから?」
キミは僕を見上げる。
「ううん、そうじゃない」
「え?」
「僕とキミが一緒だから大丈夫。ってこと。僕は、キミとならどんなことでも乗り越えられる。そう思ってるから」
「…うん」
うれしいのか、キミがしがみついていた腕に力が込められたのを感じる。
「怖いことは変わらないだろうけど、おびえずに進もう」
ゆっくりでいい。目の前にある、何が起こるかわからない暗い道を、どこまでもキミと一緒に歩いて行きたい。そう思うのだった。
LaLaLa GoodBye
「…はぁ」
雲一つない青空の下を、僕は、今にも泣き出しそうな心を抱えたまま歩いていた。
「どうしてだろ」
どうして、別れようって言われたんだろう。
自分の何がいけなかったか。キミは言っていたかもしれないけど、ショックを受けた僕には届かない。
「はぁ」
もう一度ため息を吐く。
「落ち込んでても仕方ないんだよな」
いくらため息を吐いても、落ち込んでも、別れた。という事実は変わらない。
「LaLaLa GoodBye、大好きだったキミ。大好きだったけど、僕とは運命じゃなかったんだね」
と、前向きになれるほど、僕は強くないから。
だから今は、今だけは泣いてもいいよ。
そして、心が晴れたら前を向こう。
太陽のあたたかさに励まされ、僕は涙を流すのだった。
梨
 
「はい、どうぞ」
「え?」
振り向いた僕の前に差し出されたのは、みずみずしい梨。
「あ、ありがとう」
見ていたスマホの画面を閉じ受け取ると、口に入れる。
「ん、甘くて美味い」
シャクシャクと音を立て、口いっぱいに広がる甘みを堪能していると、にこにこしているキミが目に入る。
「美味いね、この梨」
「でしょ。この前食べたとき美味しかったから、あなたにも食べてほしいな。って思ったの」
と、何でもないことのように言うキミに
「そっか、ありがとう」
何でもないことのように僕はお礼を言ったけれど
自分が美味しいと思ったものを僕にも。
と思ってくれたキミと、この先の未来を共にしたい。そう思うのだった。
10/18/2025, 8:44:02 AM