知柳

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『雪』

いつからだろう、その存在が鬱陶しく思うようになったのは。
いつからだろう、その存在を忌み嫌うようになったのは。

幼少の頃より雪合戦に誘ってくれるような友人が居なかった私でも、雪が降ると聞けば小さな瞳をキラキラと輝かせて胸を踊らせていた。

チロチロと雪降る空を見上げ、明日の朝には積もらないかとワクワクしながら眠りについた。
翌朝にベランダに雪が積もっているのを見て家の前に飛び出し、ちいまいおててを真っ赤に染めながらちいまい雪だるまを一人で雪の中に蹲りながらせっせと作ったりなんかしていた。

そうして雪と慣れ親しんでいたのに、いつの頃からか私は雪という存在を忌々しく思うようになっていた。具体的には、主に社会に出るようになってから。

雪が降る日は決まって凍える程に寒いし、雪が降った後の道路は凍り付いていて転んでしまう危険性がある。
何より、私の使っている武蔵野線は路線の中でも最弱。強風程度で止まるような路線なのに、雪なんてふろうものなら止まるに決まっているのだ。

童心と言うやつを忘れてしまった私は、雪を疎む気持ちこそあれど、再び遊んだりなんかはしないで「どうか降ったとしても積もらないでくれ」と心の中で手を組んで祈るのだ。

今年は思い出してみようかな。雪にはしゃいでいた童心。

1/8/2023, 12:15:47 AM