終わりなき旅
物語る、とはずっと旅を続けているようなものなのだろうと思っていた。
それができなかった自分のための覚書:
◯あなたはうっすら憧れたものにはなっていない。それだけの衝動がなかったからだ。
だがあなたはまだ物語が好きで、誰かの物語を世に出す手伝いをしている。仕事はやりがいがあり、あなたは適度に幸福である。
◯誰もがずっと描き続けられる訳ではない。現にあなたが大好きなジュブナイルSFの作者は、あなたの知る限り他に作品を書いていない。
でもそこにはおそらく、その人の書きたかった全てがあった。ずっと未知の場所を旅し続ける必要はない。読み返せば大切な物語はそこにあり、あなたは何度でも旅に出られる。
◯仕事をしていて気づいたことの幾つか。優れた語り手は、あなたにないこんなものを持っている。
・圧倒的な個性や斬新な世界観:多少の矛盾すら吹き飛ばしてしまう。
・(上と矛盾するが)自分が何を書いたか、ちゃんと覚えている能力:自分の世界の法則や時間軸、このキャラクターは何をしようとしていて、何が好きか、誰にどんな台詞を言ったか。それをしっかりと覚えていれば、人物の行動や展開は無理のない、パズルのピースがぴったりはまったような印象を与えるものになる。
・「推敲する能力」:「彼女はまるで◯◯のような××色の髪と△△のような◻︎◻︎色の瞳の持ち主で肌はまるで〜〜産の⚫️⚫️のよう云々」と、外見上の特徴を一気に並べ立てない(※ジャンル上必要である場合を除く)。無駄な描写と繰り返し(「何だって⁈」と私は大声で叫んだ、のような文において、誰が喋っているか自明な場合の『と私は〜』にあたる部分)は思い切って削り、「印象づけたいもの」を描写する。
◯あなたがここに何かを書き込んでいるのは日記や独り言や、昔書いてみたかったものの断片を吐き出してすっきりしてみたかったからである。案の定、日記とポエムとストーリーのない何か(おそらく世間では黒歴史と呼ばれるもの)が積み上がりつつあるが、今のところ一つだけ書いて良かったものがあった。24時間以内の短い旅だったが、それを吐き出せただけで、あなたは前より少し幸せである。
終わりなき旅を続けるすべての方へ。あなたの旅が良きものでありますように。
いつの日か原稿を介してお会いすることがあるかもしれません。私は良い書き手ではないけれど、仕事はちゃんとしているのでその時はどうかよろしくお願いします。
5/31/2024, 9:57:54 AM