時雨

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高校三年生の夏。
その日は桜と綺麗な太陽の中で僕は高校を
卒業した。
彼の卒業スピーチ。
何人もの人を惹きつける魅力を持った彼の最後の
話だ。
「卒去生代表、・・・・」
「はい。」この3年間でたくましく、自信がある
その背中を全員に見せ、ゆっくりこちらへ素敵な
顔が向く。
「皆さん、この度はご卒業おめでとうございます。
この高校には沢山の思いが詰まっています。悔しい思い、楽しい思い、そしてまだここに居たい思い。
そんな思いが詰まっている高校では、悩む事も多かった事でしょう。そんな苦しい日々も、乗り越えて来た方々もこれからは立派な大人として人生を歩んで行くことでしょう。人生を歩んで行く中でこの高校で過ごした日々を忘れないで欲しいと思っております。悩んだ時は高校時代を思い出してください。これからもゆっくりと未来へ歩んでください。」
ここで終わり、降りてくる筈の彼は降りては来ずそのままステージの上に立っている。
「、、、まだ夢は諦めないでください。」
と最後の言葉を吐き、ステージから降りてくる。
そんな言葉を聞き目に溜まった涙を必死に抑え、高校での出来事を振り返っていた。
僕にとって彼は特別だった。恋人だったんだ。
でもそれも今日で終わり。僕の家は代々伝わる伝統があり、それを僕も継ぐことが生まれた瞬間から決まっていた。そして許嫁もいる。そうゆう大人が決めた人生を歩んできた。自由なのは高校まで、だから彼に好きとゆう感情を抱いた所でもう終わりだったんだ。
未来も決まっているのに彼を好きになってしまった。
そして彼に告白をしたんだ。そしたらまさかのOK、振られたらそこで終わりにしようと思ったんだ。でも返事はYES。あの時は参ったよ、凄く嬉しくて泣いたよ。でも自由なのは高校まで、高校を卒業すると別れなければならない。その事を彼に話したんだ。
彼は真剣に話を聞いてくれて、時々目を見開いて、どんどん彼の表情が曇っていく。
「嫌なら振ってもらっても構わない。」
あの時はこの言葉しか出なかった。
折角両思いになれたのに、
「条件を付けていいか?」「条件?」
「あぁ」「いいけど、?」「それじゃあ条件は」
「最後はお前から僕を振ること」
「、、、わかった。」
こんな条件をつけられた。
でもまぁいいと思った。
彼には傷ついて欲しくないから。

そして卒業、、
彼は人気者で誰でも惹きつける魅力があったから制服のボタンはもちろんゼロ。さすがだ、笑
少し笑ってしまったよ。

卒業式が終わってから彼の家に行った。
スーパーでお弁当を買って彼の家で
彼との最後のご飯を食べる。
無言で食べるご飯はあまりに美味しくなく、
味がしなかった。
さっきまで晴れていた空も
ポツポツと雨が降り始めそれは段々強くなっていく。
「雨、降ってきたな」「そうだね」
雨が強くなってきて音があまり聞こえない。
「、、、ねぇ別れよっか」「あぁわかった」
「うん今までありがとう。」「、、。」
大雨の中少し早歩きで玄関へ向かう。
「傘ねぇだろ。その傘持ってけ、
返さなくていいから。」
′′返さなくていいから′′が凄く寂しく感じた。
もう会えないんだなと確信した。
「うんありがとう。」「バイバイ、元気で」
そう言って勢いよく外に出た。大雨で泣いているのも
気づかれず家に帰れた。
家に入った瞬間 もう戻れないのだと確信した。



これは少し悲しいお話です。
ここまで読んで頂きありがとうございました。

6/1/2025, 5:54:31 PM