喫茶店やカフェに入ると、彼女は必ずと言っていいほど紅茶を選んだ。1度疑問に思い、尋ねてみたことがあった。
「いつも紅茶を飲むよね。」
カタッと音をならして彼女はティーカップを置いた。薄いのみ口に西洋の模様。ベースは白色だけど取っ手だけは金縁。触れたら壊れてしまいそうだけれど、どこか主張が強いカップは彼女によく似ていた。
「コーヒーが嫌いな訳じゃないのよ」
「じゃあなんで飲まないの」彼女はこちらを見る。
「コーヒーは美味しいところと、マズイところの差が酷いから。でも紅茶で美味しくないところは中々稀じゃない」
そう言うと彼女視線は手元に戻り、浮いた輪切りのレモンを見つめていた。確かにここのコーヒーはミルクを入れないと飲めたもんじゃない。
11/12/2025, 7:19:21 AM