紫月

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「今日の関東から西は冬晴れの天気と──」

 天気予報を聞きながら、窓をカラリと開ける。どうやら今日は暖かい一日になるようだが、流石に朝はまだ少し寒さが残っている。無防備に吸い込んだ空気が、肺の中からジンワリと体温を奪っていく。すぐに私は窓を閉め、暖房の風が直接当たる場所へと避難した。

 ゴウンゴウンと朝から文句も言わずに動いている洗濯機が止まる頃には、もう少し暖かくなっているだろう。せっかく天気が良いのだから、やりたい事は山程ある。掃除洗濯、三が日は近所のスーパーが休みだったので、そろそろ空っぽになりそうな冷蔵庫にも、何か買ってきた方がいいだろう。毎朝、死んだ魚の目をして、ゾンビのような足取りで会社へと向かう私からは想像もできないくらいヤル気に満ちているのがわかる。生きている。今、私の体には、生きるための血が流れている。感情が昂まり、エイドリアーン!!と無性に叫びたくなった所で、今の若い子には通じないだろうなと気が付き落ち着きを取り戻した。仕方がないのだ。アラサーにとって、冬の寒さは耐え難いものがあるのだ。たまの冬晴れは、まさに地獄に仏の気分であるのだ。


 冷静さを取り戻した心と、温かさが戻ってきた体を動かし、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。どうやら単純な私は、天気が良いと頭の思考回路も随分とポカポカお花畑のような事になるようだ。けれど、それも悪くないなどと思ってしまうのは、仕事に追われると中々そのような気分ではいられないからなのだろう。

 今日は、太陽が20時間くらい出ていればいいのに。

 そんなくだらない事を考えている時間も、そんなくだらない事を考える私にしてくれる天気も、確かに私にとっては大切で必要なものなのだ。


『冬晴れ』
途中から頭空っぽだった

1/5/2024, 1:23:42 PM