夜が好きだ。もっと言えば、夜の静かな空気が好きだ。街のみんなが寝静まって、いつもとは違う世界のようになったそこを、ひとりきりで歩く。異世界を旅している気分になる。勇者にでもなったような心持ちがする。
月を従え、星を辿り、知っているのに知らない道を進む。暗闇の中で一際光るコンビニだって未知の場所だ。通い慣れた場所なのに、どうしてこんなに胸が踊るのか。僕は肉まんを買って、辺りの空気を白くさせながらかぶりつく。
やがて冒険の旅は終わり、僕は公園に足を踏み入れる。ゆらゆらと揺れるブランコには先輩が座っていて、まるで戦利品かのようにカフェオレを飲んでいる。目が合い、何も言わずに隣のブランコに腰掛けて、さっきそこの自販機で買ってきたあったか〜いお茶のキャップを開ける。無言で乾杯し、僕達は無事の帰還を讃え合う。「コンビニのホットスナックに新商品入ってました」「向こうの道に猫ちゃんがいたよ」と、重要な情報交換も忘れない。
勇者は忙しいので、すぐに次の旅に出なければならない。先輩に「また明日」と言うと、「もう今日だよ」と笑い声がする。「では、また今日に」と手を振って、僕は家への旅を始める。次に先輩に会うときは、その旅路の話をしてあげようと思う。
1/22/2026, 8:51:03 AM