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チャリンッ。ガランガラン。パンパンッ
「ひいちゃんが不幸になりますように」
パン
45°のおじぎを済ませ10段ほどの階段を駆け下り、したにとめてある自転車に飛び乗る。待ち合わせ場所まで田んぼだらけのあぜ道を急ぐ。
「おーい!!」遠くの方に女の子が見える。やわらかそうな黒髪を2つに結び無邪気な顔であなたは手を振っていた。「ごめーん!!!ひいちゃんお待たせー!!」自転車を止めた途端に吹き出す汗を拭いながらあなたに駆け寄る。「何してたの?」「ちょっとお母さんのてつだい!」「ふーん」「ね、ね、早く駄菓子屋行こ!わたしいそいだから喉乾いた!」自転車に乗りなおし、2人で肩を並べおしゃべりに花を咲かせながら遊び場への道を走る。なんでもない私の大切な大切な時間。ずっとずっと終わらせたくないすてきな時間。

「いった!」「わ、だいじょぶ?」ひいちゃんが石につまずいて自転車ごと倒れこんでしまった。「えへへ…ごめんごめん…」ひぃちゃんは笑ってなんでもない顔をして見せているが膝を擦りむき血がでてしまっている。「大丈夫じゃないよー!はい絆創膏!私貼ったげる!」しゃがみこみ視線を合わせる。傷を見る。「ありがと。みきちゃんはすごいね。いつも色々持ってて、色々できて。」封を開ける。紙を剥がす。ひいちゃんの膝に触れる。「それはひぃちゃんがいっつもドジするからでしょ。私はそれが心配なだけ!」ホコリを落とす。ティシュで血を吸い取る。「そうだけど、でもこんなにしてくれるのみきちゃんくらいだよ」絆創膏をはる。顔を上げる。少し照れたようにはにかむあなたと目が合う。「そんなこと言ってもこやって手当してあげてるのがおあいこにはならないんだからね」目を逸らす。「うん。ありがと」あなたはいつも素直に。真っ直ぐ私に言葉を伝えてくれる。嬉しくてこそばゆくて。太陽の暑さと混じってどうにかなっちゃいそうになる。「じゃあ行こっか」立ち上がり自転車をこぎだすあなた。「あ、待ってよー!おわったらすーぐ調子のるんだからー!」置いてかれないよう急ぐふりをしてあなたにバレないよう大事にティシュを握りしめポケットにいれた。

ひぃちゃんはよく怪我をする。ちっちゃい時も転んだりどこかにぶつけたり。その度泣いて私を呼んだ。なにもできなかったころは痛いの痛いのとんでいけ!と誤魔化したり、痛みが引くまで手を繋いだりしたよね。今はあなたをちゃんとお手当てできる。あなたの体に私が貼った絆創膏があり、あなたの血液がついたティシュが私の手元に残る。私はそれがかけがえのない宝物なんだ。あなたが怪我をする。あなたが私を必要としてくれる。あなたからの宝物か増える。ずっとずっともっと。もっと。これが続けば。これができれば。
だからね。今日もお願いするんだ。あなたができるだけ怪我するように。あなたができるだけたくさん血をだすように。

チャリンッ。ガランガラン。パンパンッ

7/4/2024, 12:14:26 PM