未知亜

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 ブランコの揺れが停まった。君の靴裏が砂をこするザッという音が響く。
「裕君が思う程、あたしは強くないよ」
 水筒を取り出して、君はごくごくと中身を飲んだ。白い喉が規則的に上下するのを、不思議な気持ちで僕は見ていた。
「誰かの力になれてるって思うことで、言い聞かせてただけなんだよね」
 自分にも、価値があるってさ。

 こんなに悲しげに笑う君を僕は初めて見た気がする。水筒を握る指の先が喉よりも白くなっていた。君のことを照らせたらいいと、その時僕は強く願った。
 多分自分からは、決して輝けないけれど。

『君を照らす月』

11/17/2025, 9:55:04 AM