ことり、

Open App

七夕


「ニャーン」
「おっクロ!元気だったかあ」
近所に、たまに出会う黒猫がいる。
名前はクロ(安直)。
黒猫は嫌がる人もいるが、俺は好き。
あの黒い毛並みを撫でまくって、
艶々のキューティクルクル(?)に
してやるのだ。
クロは人懐こくて、
かなりクルクルに近づいてきた。
そんな楽しい日々。

だったのに。
…最近見かけない。
ゴールデンウィーク頃から。
テリトリーを変えたのか、
はたまた追い出されたのか。
もしかして暑いし、衰弱して…。
いやいや!クロに限ってそんなことは!
そんなことは…。

スーパーや駅などで、
笹と短冊のコーナーが
設けられる時期になっても、
クロに会えない。
おっさんは悲しい。クロに会いたい。
そんな気分を誤魔化すために、
今日もコンビニで酎ハイを、
プシュッと開けて、呑みながらの帰り道。

「クロ!」
なんとクロが道の真ん中でお座りして
俺を待っている。せっかくの酎ハイが
ごろごろとアスファルトに転がる。
「良かった。良かったなあ、クロ」
しかしクロはつれなく道の傍らの
古びた物置小屋に入ってゆく。そして。

子猫を1匹ずつ咥えてきて
俺に見せてくれた。全部で4匹。
柄は様々。黒猫もいる。

「…」俺は言葉にならない感動で
いっぱいだった。
そして以前から調べていた保護猫団体に
その場で電話を入れたのだった。
もちろん、俺が引き取るつもりで。

これが七夕の神様(?)の
引き合わせってやつかあ。
俺は電話の後、パンパンと天の川に向かって
柏手(かしわで)を打つのだった。

合ってるのかどうかは知らない。

7/8/2024, 8:51:34 AM