ラフロイグ

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リビングにて
瓶ビール片手にスマホをポチポチやってると、娘が近づいてきた。

「ねぇ、ちょっといいかな?聞きたいことあるんだけど?」
「ん?おお、何?」
「いつもお世話になっているオジサンに、気の利いた物プレゼントしたいんだけどさ、わかんないんだよねー、何を貰ったら嬉しいのかがさー」

「若い女の子がくれるもんだったら何でも嬉しいと思うぞ?」
「いやだから、その何でもって言うのが難しいって話しよ!」
「いやいや、若い女の子がプレゼントしてくれた…という事象だけでおじさんは天にも登る気持ちになる生き物なのよ。わかる?」

「あのさ、そのポチポチそろそろ止めてくんない?」
「今忙しいのよ。白熱してんのよ。オンライン対戦中なのよ。」
「誰とやってんの?」
「会社の新人君」
「は?そんな人とやってたの?」
「うん?何かおかしいか?」
「20代前半の子と遊んでるの?オジサンが?」
「だから、そうだって!」
「ありえないんだけど…」

「あぁ、なるほどな、お前は大事なことがわかってないな〜」
「はい?」

「男って生き物はだな、どんなに皺が増えようとも、髪が薄くなろうとも、社会的立場が変わろうとも、本質的なものは何も変わらないのよ! しかもスマホのゲームもただのお遊びだと侮るなかれ!これはな、趣味と実益を兼ね備えた最強のコミニュケーションツールと言っても過言ではない代物なのだよ…今の時代ぃぃぃぃぃぃ。あーぁ、死んでもーた!」

「…アホくさ」

「そう、正にソレ!男は幾つになってもアホなの!だから、真剣に考えるだけ無駄なんよ。媚びない程度の可愛げのある言葉を添えてプレゼントすればさ、あちらで勝手に拡大解釈してくれてニヤニヤしながら満足するんだから」

「何だか…損した気分」

「もう一つだけこの世の真理をお伝えしてあげよう。女の人は自己承認欲求の忠実なる下僕、男は自己快楽の忠実なる下僕。これテストに出ます、よく覚えておくように!」
「んー、ソレは何となく合ってるような気がする」

「そんじゃ、俺は風呂入ってくるわ〜」
「いてらー」


翌々日

いつものように出勤しようと玄関に行くと、
沢山の駄菓子が入ったBOXにポストカードが添えてあった。

「お父さん いつもありがとう お仕事頑張ってね♡」


知らず知らずの内に繰り出された数十年振りのスキップ。
超低空飛行だったけれど、背中に羽が生えたよな、そんな一日となりました。


——— あなたへの贈り物 ———

1/22/2025, 2:01:07 PM