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【お題:耳を澄ますと】


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かいじゅう の
     あしおと どすん
  どしん

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かいじゅう の なきごえ
 がおがお
       ぐおお

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またゴジラの絵だ。
家族でゴジラの映画を観てから、4歳の娘はすっかりゴジラが気に入ってしまって、保育園から持ち帰るのは全部ゴジラのような『かいじゅう』の絵になった。

「本当に怪獣が好きなのね」

今日描いた絵を誇らしげに見せてくれた、娘の頭をポンポンと撫でる。

「うん!かいじゅうのこえ、いつもちがうからおもしろいの!」
「そうなの?」

ゴジラを観たのは一度きりだったはずだけど、『いつもちがう』とはどういうことだろう。

「なきごえ、きいてくる!」

そう言って、娘は二階への階段をパタパタと駆け上がった。
どうやら、娘が大好きな『かいじゅう』は我が家の二階にいるらしい。
音の出るおもちゃか何かを買った記憶もなく、いよいよ『かいじゅう』の正体が気になってきたので、娘の後を追って二階へ上がった。

「わっ、何してるの」

娘は二階の廊下にぺたんと座り、部屋のドアにぴったりくっ付いていた。
自分の部屋に行っておもちゃでも探していると思っていた私は、驚いて大きめの声を出してしまった。

「ママ、しずかにして」

しっ、と口元に人差し指を当てて、娘は声を潜めて喋る。

「あのね、みみをすますと、かいじゅうのこえがきこえるの」

どうやら、ドアに耳を当てて『かいじゅうのこえ』を聞いていたらしい。

「きょうは、ぐおぐお、ってないてる」

妙に真剣な顔で言うものだから、私も娘に習って、ドアにぴったりと耳を当てて、耳を澄ませた。

< ぐおお、ぐおお >

思わずふふ、と笑いがこぼれる。

「なるほど、寝てるお父さんは『かいじゅう』だったのね」

5/4/2024, 2:39:45 PM