無音

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【232,お題:怖がり】

ある森に、とても怖がりなヘビが住んでいました。
ヘビは自分以外の全てが、とても恐ろしいもので構成されているような気がしていました。

森に住む動物たちはいつも「一緒に遊ぼうよ」とヘビの家にやって来ます。
悪意のある言葉ではないはずなのに、上手く言葉が入ってきません
その言葉は本心なのだろうか、疑心暗鬼になりすぎて苦しい
何度も響くノックの音が怖くて、頭から布団を被り目を閉じました。

ヘビは動物たちがいなくなった後、そろりと起き上がり
窓から遊ぶ動物たちを眺めるのでした。


ある日森が真っ赤に染まるほどの山火事がおきました。
その日ヘビは自分の家に引きこもっていましたので、気付くのが遅くなり逃げ遅れてしまいました。

辺り一面真っ赤でどっちに逃げれば良いかわかりません
迷っているうちに火の手はどんどん迫ってきます

「ああ、僕はもうダメなんだ」息がつまるような恐怖の中
自分を守るように丸くなって、ヘビは怖さで泣き出したい思いでした。

その時、目の前に手が差し出されました

顔を上げるとそこにいたのは、この森で一番の体力自慢のクマでした
「早く逃げよう」自分よりも何倍も大きな体、ヘビは迷いました

ですが怖さよりも安堵がギリ勝ち、ヘビはクマに抱えられて無事に山火事から逃げることが出来ました。

安全な場所まで行くとクマはそっとヘビをおろします
他の逃げてきた動物たちが、ヘビを心配して集まってきました。

「大丈夫か?」「どこか痛いところはあるか?」「無事でよかった」

前よりも言葉がすんなり入ってくるようでした。もう怖くありません

ヘビは照れくさそうに笑うとみんなの輪に入っていきました。

title.怖がりだった蛇

3/16/2024, 2:39:41 PM