お日様の照った日が続いている。地面はカラカラで、風が吹けば砂埃が舞い上がった。
細やかな雨が柔くさわさわと降り出した。力ない雨粒も後から後から重なれば、やがて乾いた地面を湿らせてゆく。
おお、やっときた。恵の雨っていうやつね。
結構喉も体もカラカラだったのよ。
のっそりと殻の中から身を出して、葉っぱの屋根から外へ出た。
うん、このくらいが丁度いい。
うっとりと久しぶりの雨に浸っていたら、ドシンドシンと地面が揺れた。
ワンと鳴く毛むくじゃらのイヌと、ぎゃーと泣くふにゃっとしたニンゲンが飛び跳ねている。
「ワン!ワン!」
「あめ!あめ!」
雨が嬉しいのは同じみたいだけど、跳ねるのは勘弁して欲しい。
しっとりと雨を愛でる情緒というものはないのかしら。まったく、踏み潰されそうで留まってもいられやしない。
仕方なくまた葉っぱの屋根へ戻っていく。
「でーんでん?」
「ワン!ワン!」
ニンゲンの指が殻を掴んで持ち上げた。
ああ、折角の雨だというのに。
ため息をついて、再び殻の中に閉じこもった。
#5 2023/11/6 『柔らかい雨』
11/6/2023, 2:20:32 PM