名無しの椛

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《正夢》

 2年前の1月28日午前8時頃、私の志望校の受験日。

 No.196という名札を手に、受験会場にいた。

 なんとも言えない緊迫感が教室内を包む。

 同じ中学の子も何人か見かけた。3年間共に過ごしてきた仲間であってもここでは敵同然。

 こんなにも長い時間をかけて積み重ねてきたことが、このたった一つのテスト50分間で無駄になるかもしれないと思うと手が震えて冷や汗が止まらなかった。

 泣いても踠いてもここで全力を出し切ってやる、と覚悟を決めてチャイムと同時にペンを動かす。
 
 受験が終わって、一緒の会場にいた友達と「お疲れ様」「疲れたねぇ」とかいつも通りの言葉を交わしながら帰った。

 さっきまではライバルだったのに今ではいつも通り友達に戻っているのがちょっと不思議な感覚だった。
 
 その日の夜、夢を見た。受験に落ちる夢。見たくもなかった。そりゃそうだよね。

 その夢は正夢になった。まるで未来予知していたかのような、「お前は受験に落ちてるんだよ」と、夢に現実を突きつけられた気分。
  
 受験人数が多かったから仕方ないだの倍率が他より高かったからしょうがないだの、当時は言い訳の言葉を色々並べていたけど、あれはただの現実逃避に過ぎなかったなと今では思う。

 努力だと思っていたものは違ったんだと分かった時には、悲しいよりとても辛かった。

 塾とか講習に毎週通わせてくれた親にも、夜遅くまで補習をしてくれた塾の先生にも、謝っても謝りきれないぐらい本当に申し訳ないと思った。
 
 でも私にはどうしても叶えたい将来の夢がある。
夢が叶うその日まで努力し続けようと、卒業証書を手に母校の門をくぐった。

お題: 夢と現実
  
 追記・ 今年、受験生の皆さん頑張ってください!お節介ではありますが、頑張る受験生にエールを送ります。頑張れーー!!

 
 

12/4/2024, 2:26:15 PM