ここが分岐点。
1点ビハインドで向かえた八回表の守り。
本能が反応する。
疲れていたはずの手足の感覚が戻って来る。
二死二、三塁で迎えたバッターは、四番。
不思議な感覚に陥る。
いつもより速い鼓動を感じる身体に反して、頭はかつてないほど冷静に周りを捉える。
二塁手からのサインを確認し、キャッチャーに向き直る。
一球目。
今までのフォームを思い出す。
走馬灯のように、軌跡が駆け巡る。
柔軟に、かつ大胆に力を込めて。
ストライク
ボール
ストライク
力を込めて。
ボール
力を込めて。
キーーン
身体が撥ねる。
行く先を見つめ、捕球体制に入った仲間を見つめる。
パシッ
「アウトぉ!」
「おおおしゃぁ゙ぁ゙!!」
身体が吠える。
歓声が聞こえてくる。
急激に身体が弛緩していくのを感じ、慌ててベンチに走り出す。
口角が上がりきって戻らない。
チームメイトと称え合いながら、攻撃のために声を燃やす。
もう一度闘志を宿す。
絶対に勝つ。
10/7/2024, 1:00:47 PM