〜忘れたくても、忘れられない〜 小説
花が落ち芽吹いてくる葉の香り
きみが姿を消したのは、この季節だった
夏の始まり、春の終わり
花粉症が無くなっても、心に残るむず痒さに腹が立つ
きみは、今どこで何をしているのだろうか
今も、あの頃の「きみ」のままだろうか
もしかしたら、この街に戻って来ているのではないだろうか
もう、私の事など頭の片隅にも置いていないのだろうか
そんな考えが頭を巡る度、私はきみへの思いを抑えることができなくなっていたんだ
でも、もう大丈夫
きみが街から姿を消して、もう何年も経ったけれど、やっと見つけた
きみはもうずっと…これからも私の近くにいるから
そのはずだから
だって、死体がひとりでに動くはずが無いでしょう?
葉の香りや、夏の始まりの不愉快な暑さを覆い隠すように
錆び付いた血の香りが鼻を掠めている
きみを殺めてしまった罪悪感
きみが「きみ」でなくただの物になった悲壮感
もうきみが何処にも行かないという高揚感
体は汗をかくほどに暑いはずなのに、頭はツンと冷えきっていて、酷く冷静だった
包丁を持ってきみを壁に追い詰めたときの悲鳴
どくどくと流れる真っ赤な血
そのときの感情も、情景も香りも
忘れたくても、忘れられない
いや…忘れたくもない
ダイスキな君と過した、ダイジなジカンだから
10/17/2024, 11:09:45 AM