海月 時

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「わぁ!お人形さんみたい!」
どこから聞こえる称賛。そう、私は世界一綺麗なのだ!

「うわぁ。ブスが近づくな。」
三年前までの私は、自他ともに認める醜さを持っていた。しかし、気にしないように生きてきた。高校に入るまでは。高校のクラスメイトは、私を嘲笑い罵った。
「恨むんなら、そんな顔に産んだ親を恨めよ。」
彼女達が言ったように、私は親を恨んだ。それでも変わらない現実に、吐き気がした。いつの間にか、私は学校を退学していた。

高校を退学してから、私は必死に稼いだ。そして整形をした。辛いダウンタイムを乗り越え、ついに理想の自分になれた。何もせずとも避けられた昔とは違う。皆が私の周りに集まった。そして私の美貌に感嘆した。もちろん、私の過去を知っている人は少なくない。だが好き好んで私に絡んでくる人は居ない。居たとしても中指を立ててやるだけだ。

「親から貰ったものなんだから、大切にしなよ。」
うるせぇよ。こちとら親から貰った命を大切にするために顔を犠牲にしてんだよ。
「整形なんて甘えだよ。ちゃんと努力したの?」
努力してどうにかなるのは元の良い奴だけなんだよ。
「ブスは一生ブスのまま。」
今の私を見て、もう一度言ってご覧。

私は今の自分が大好き。でも昔の自分も嫌いじゃない。だから、箱の中にしまっておくんだ。誰にも開けさせない、誰にも触れさせない。私の秘密の箱。
「秘密、だよ。」

10/24/2025, 2:54:05 PM