高い建物だらけで人が多い街。
都会に憧れて田舎から出てきたのだが……人の多さに酔ってしまいそうだ。
おっと……危ない危ない。
両手で頬を叩き、気合を入れ直す。
最近都会では、田舎から出てきたての人から金銭や荷物を騙し取る田舎者狩りが流行っているらしい。
俺も気をつけないとな……。
キャリーケースを引っ張りながら、周りを警戒して街を歩く。
「お兄さん……ちょっといいかい?」
お婆さんとすれ違いに声をかけられた。
足を止め、お婆さんの方へ振り向く。
「どうしました?」
「腰が痛くて接骨院へ行く途中だったんだけど、痛みが増してきてねぇ……。よければ、接骨院まで連れて行ってくれないかい?」
お婆さんは曲がった腰をさすりながら言った。
地元でもよく年寄りから頼りにされたから、これぐらいお安い御用だ。
「いいですよ。とは言っても、俺さっきこの街に来たばかりで……。接骨院の場所教えてくれますか?」
「おお、そうだったのかい。忙しいのにすまないねぇ」
「いえいえ、全然大丈夫ですから」
「ありがとうねぇ。もうひとつお願いして悪いんだけど、接骨院へ行く前に、そこのコンビニでお茶を買ってきてくれないかい?喉が渇いちゃって」
お婆さんが指を指した先には、コンビニがあった。
地元にもある同じ系列のコンビニだ。
「これで買ってきておくれ。お兄さんの分も買っていいからねぇ。私の奢りだよ」
お婆さんのシワシワの手から、小銭を手渡される。
「ありがとうお婆さん。ちょっと行って来るんで待ってて下さい」
キャリーケースをお婆さんに預け、コンビニへ向かう。
ちょうど俺も喉が渇いてたから、有り難く買わせてもらおう。
人が良さそうなお婆さんに出会い、幸先がいい。
お茶を二本買い、お婆さんの元へ戻る。
「お婆さん、お待たせ……あれ?」
お婆さんがいないし、俺のキャリーケースもない。
周辺を探すが、どこにもお婆さんはいない。
まさか……俺は田舎者狩りに遭ったのか!?
しかも年寄りに!?
「あのババア!!!」
まだ遠くへは行っていないはず。
だが、いくら探しても、お婆さんとキャリーケースは見つからなかった。
都会は恐ろしい所だ……。
1/28/2026, 10:16:29 PM