とある恋人たちの日常。

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 さすがに離してもらえない……か。
 
 俺の仕事は救急隊員で、まあそれなりに危険な仕事もある。
 今日の仕事はとにかく忙しくて、いつもは返せるメッセージの返事を返せなかった。いや、それどころか残業まであって全然連絡ができなかった。
 
 ようやく連絡して、家に帰って、ご飯食べてお風呂入って、と。日々の生活通りに過ごして眠ろうかとなってから、抱きついて離してくれなくなった。
 
 それから時間はどんどん経って時計の針が重なる。それでも俺に抱きついて離れない。
 
 いや、俺は嬉しいけれど、なんでこうなったかを考えると素直に喜びづらいな。
 
 普段の彼女はこんなふうにはならない。俺に迷惑をかけないように気を使ってくれる。
 でも、今日は違う。
 
 彼女にとってトラウマ的なものを踏んでしまったのかもしれない。
 
 自分が危険な仕事をしているからこそ、彼女への連絡はしていたんだ。
 
 俺が生きている証に。
 
 でも今日はそれが出来なくてこんなに心配させちゃった。
 
「ごめんね」
 
 彼女の顔は見えないけれど、俺の身体を抱きしめてくれる。
 俺は彼女の頭を優しく撫でてから抱きしめた。
 
「俺はここにいるよ」
 
 
 
おわり
 
 
 
四九六、時計の針が重なって
 
 
 

9/24/2025, 1:25:06 PM