夢が醒める前に(オリジナル)
人間、誰しも夢に見ると思う。
殺したいほど憎い人。
それが死ぬ夢。
殺す夢。
現実で殺したら人殺しになって刑務所行きだ。
下手をすれば無期懲役。
けれど、殺しが2人じゃなければ死刑にはならないだろう、なんて計算も働く。
私の場合、夫だった。
いわゆるDV夫。
毎日逃げたいのに逃げられない。
死ねと思うのに死んでくれない。
私が死にそうになるけれど、死なない。
今日も暴力を振るわれた。
気に入らない事があったようで、やめてと訴えても暴言と暴力が止まらなかった。
私は気を失っているのだと思う。
隣で、夫が幸せそうにすっきりした顔をして寝ていた。
やたら無防備で、愛おしくて憎らしい。
夢だ。
これは夢だ。
昔の、優しかった彼の夢だ。
私は身体を起こし、手近に落ちていた酒の瓶を掴んだ。
振り上げて、力一杯振り下ろす。
ガラスの割れる音と、肉がひしゃげる音がした。
「この!この!」
私は日頃の恨みを酒瓶にこめて、夫の頭に振り下ろし続けた。
これは夢だ。
せめて夢でくらい、反撃しても良いよね。
振り下ろすたびに、澱のように溜まっていたドロドロしたモヤが晴れていく。
私は喜びに胸を震わせた。
ああ、夢よ醒めないで。
あの日常には二度と戻りたくないんだ。
気がつくと、現実の夫は頭を割られて死んでいた。
私が殺していた。
あれ?これ、夢だったのでは?
私は混乱して血だらけの瓶を床に置いた。
ゴトリと音がした。
夢から醒めた瞬間だった。
3/20/2026, 11:08:35 AM