「美味しいよ!」
そう言いながら私の大失敗した料理を食べてくれる彼。
残していいと言っても美味しいと聞かない。
嬉しさや恥ずかしさが混じった感情になってしまう。
それももう何十年も前の話。
「ごめんなさいね」
「うまいよ」
私は年老いて認知症というものになってしまったらしい。
今日も味噌汁に出汁を入れ忘れたり、炒め物に味をつけるのを忘れた。
台所から調味料を持ってきて入れようとしても彼は拒む。
「うまいからこのままでいい」
「ずっと嘘が得意なのね」
『優しい嘘』
1/24/2025, 10:09:42 AM