ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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奇跡をもう一度

奇跡は二度ないから奇跡なのだ、人の子よ。私は二度目の奇跡を願って祈る少女を見つめた。少女の父親は一度重い肝臓の病から奇跡的に生還した。私の力でそうしたのだが、二度目はない。あの男はまた酒で己の肝臓を痛めた。全く愚かなことだ。奇跡を願う少女も愚かだ。むしろあの男がいなくなるほうが幸せになるであろうに。人間は基本的に愚かだ。少女の背後で舞う落ち葉が一瞬ハートのかたちに並ぶ。ああいうなんにもならない奇跡が毎日起きていることに気づかず、自分の心の安寧のためだけに奇跡を願う。人間というものは理解し難い。時に奇跡を起こせる精霊である私は、もう長く…本当に長く生きたが人間がわからない。いつかわかるかもしれぬ。奇跡は日々起きているのだから。

10/2/2024, 10:46:21 AM