『あの頃の私へ』
時の流れは実に早い。
毎日、酒を飲んでは気絶したように寝ての繰り返し。
最愛の人に逃げられたこの私には、何も残ってなんていなかった。
ただ其処にあるのは、空になった瓶だけ。
ふと、恋人がいなくなった頃の事を思い出した。
事の始まりなんて、大抵は些細な話。
好きとか嫌いとかの詰め合わせ。
その日は、私の愛した人の誕生日で、恋人は酷く酔っ払っていた。
恋人は普段、言葉足らずな事がよくあったが、酒が好きだったようで、飲んでいた時はテンションが高かった。
酒を進められたが、私はやんわり断った。
すると唐突に、恋人が私に問うてきた。
恋人との間では、定番の質問だった。
愛してる?
そんな単純な問に、私はどもった。
その少しの間の後、興奮した闘牛の様に怒り狂った恋人が部屋中の物を壊して出ていってしまった。
あの頃の私へ
お酒って、美味しいですね。
今になってわかった事ですけど。
夢の中に居るかのように自由に動けないと言うのが少し不快ですが、フワフワする感じが良い。
あの時、無理にでも飲んでいれば良かったんです。
そしたら、理性も何も取っ払って本音が言えたかも知れないのに。
私はハッキリと恋人を愛していました。
最愛の人だったんです。
あの別れの時までは、ですけどね。
5/24/2024, 4:25:45 PM