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*星に願って

温泉施設の露天風呂。
ぼんやり虚空に目をやると、なにか白っぽいものが散らばっている。
 ああ、星か。
小さい頃、星は当たり前にあったのに、空を仰ぐことはなくなっていって、今はチラっと目に入った夜空にも、満月だの、スーパームーンだのと思うくらい。
傍らの塵のようなものを気には止めない。
 流れ星だ。願い事…!
思うけれど、もう遅かった。
ああでも願い事、特にないな。星さんに頼むほど切実で熱いものは浮かばない。だから、星に願うほど叶えたい何かがある誰かは羨ましいもんだなとぼんやり思う。
あの頃の自分は何を願ったのだろう。




2/11/2025, 6:05:28 AM