ガルシア

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 遠い記憶。カレンダーの日付をなぞりながら、先程までの夢を思い出した。俺の初恋は十年前の今日だったか。毎年というわけではないが、何度か同じ初恋の夢を見ている気がする。これは後悔なのか贖罪なのか、彼女への執着なのか、はたまた彼女の亡霊なのだろうか。
 長い睫毛に囲まれた明るい目は美しく、艶のある髪が月の光を反射する様は見惚れるほどだった。白い手足は柔らかく、俺が掴んでしまえば容易く動きを封じられる。長い指に手の甲をなぞられれば背骨が震えた。
 愛らしく俺の初恋を奪った彼女。俺は小さな体を後ろから腕の中に閉じ込めて、そのまま細い首を切り裂いた。はくはくと赤い唇を動かす仕草すら刺激的だったことを色濃く覚えている。あの日から忍ばせたナイフは今も宝物だ。何度、魅力的な女に恋を突き立てたことか。
 十年前の今日、心から愛していたよ。俺の初恋。


『初恋の日』

5/7/2023, 1:11:16 PM