遠くで汽笛が鳴っている。やおら底を覗き込めば思わず吸い込まれてしまいそうな真っ暗い輝きを放つ。海はキラキラ凪いでいた。どんなものも優しく迎え入れてくれるような静けさにA子はうっとり目を閉じる。頭の中ではひたすら騒がしいのに眼下の景色とはまるで真反対。嗚呼、ここだ。ここが私の居場所。やっと見つけた。ただいま。胸の高鳴りと共に彼女は一歩を踏み出した。
8/15/2024, 9:20:13 PM