関係者各位:
春の日差しの麗らかなる本日、当方の10年来の片想いの相手に想い人がいることが判明し、これによって当方の失恋が確定しました。
ついては、今後の人生で彼の姿を絶対に見ることのないどこか『遠くの街へ』拠点を移すことを決心しましたので、この告知書にてご報告させていただきます。
なお、皆様への個別の挨拶等行き届かないことをどうぞ、皆様の寛大なるお心を持ってお許しくださいませ。
「……ほらっ、書いてやったわよ! これで文句ないでしょ、じゃあワタシは行くから」
「待て待て待て、待ってくれ! あのなぁ、Sランク冒険者のギルド移動は、国にも承認をもらわねばならんのだ、だから、」
「っ、ちょっと! さっきは、ギルド所属の他の冒険者が納得しないって、そういう説明だったわよね? だから告知書にこうやって、自分の傷に塩塗るようなことまで書いてやったんじゃないっ、詐欺よ詐欺、ギルド長のくせに詐欺なんて、恥を知りなさい!」
「落ち着けって! 大体、失恋くらいで、」
「失恋くらいで、ですって……? 」
「あっ、いや違う、その……悪かった、失言だった、すまん。だが違うんだ、言いたかったのはそういうことじゃなくて……つまり、だな。失恋には新しい恋が効く、とか……あっ、頼むから、ちょっと待ってくれ!」
「いっちばん言われたくないことを、いっちばん言われたくない人に言われて、待てるわけないでしょうっ! ……え、なんでドアが開かないのよ。って……魔法障壁?! どうゆうこと、これって、外から閉じ込められてる、ってことよね?!」
「あー……あいつら、本当にやりやがった……」
「心当たりがあるの? ……違うわね。要するに、ギルド長の差し金ってことかしら……?」
「違う! 本っ当に、違うから! ただあいつらは、俺のためを思って、だな……」
「っ、もう! こーなったら、力ずくで……」
「わあああっ! 抜剣、禁止! ギルドを半壊させる気かあああっ!」
◇
「……おい。扉の向こう、なんか言い争ってるようなんだが?」
「よーし、そろそろ警戒しておかなくちゃだな。オレたちはとにかく、この扉を死守しなくてはならない」
「魔法使い3人の三重障壁なら、たとえアイツが何かしらの理由でキレて、扉をぶっ壊そうとしても、持ち堪えられるだろ? ……たぶん」
「Sランクのアイツの剣気を、魔法使い3人以外のメンツで剣気使って受けて魔法使いたちの盾になる、って算段にもなってるわけだし、まぁ数分は……」
「ってかさぁ、ギルド長の奴! とっとと告白しろよなぁ、なんで言い争いになっちゃってるわけ?」
「大体、アイツの失恋ってのも誤解なんだし。どこでどうやって知ったのか、ギルド長に想い人がいる、って……」
「あああ〜クソッ、その想い人ってのはオマエだ、オマエ! って、声を大にして言ってやりてぇ〜!」
「あと、アイツの10年来の片想いの相手はオマエだよ! って、奴にもな〜!」
「にしても二人とも、なんでそれに気づけねぇんだ? なんなら、この街の人間の全員が知ってるってのに」
「それも、10年も……」
「そりゃ、奴らが自力で気づけてたらこんな、「告白しないと出られない部屋」なんて、必要ねぇだろ」
「まぁ、確かにな」
「っ、おいっ! 扉の向こう、いま「抜剣禁止」って、奴がっ!」
「全員、防御態勢! あんのクソ馬鹿野郎が、まさか、まだ告白出来てねぇのかよーーー?!」
3/1/2026, 7:44:09 AM