230X/XX/XX
我々人類は大きな一歩を踏み出した。
人間と同じ体組成を持ちながら、衰えること無く生き続ける生命体を作ることに成功した。
この技術が広まれば、人類は永遠の繁栄を手に入れるだろう。
成功体第一号を、希望を込めて『ホープ』と名付ける。
230X/XX/XX
ホープの学習能力は凄まじい。
五歳にして修士論文を修めた。
研究者として我々のプロジェクトに参加させることを検討している。
231X/XX/XX
ホープの身体能力について記録する。
オリンピック選手が数百年かけて築いてきた記録を悉く凌駕してゆく。
心身ともに成熟してゆくのが楽しみだ。
231X/XX/XX
軍がホープの量産を求めていると打診があった。
ここに記録すべきではないのだろうが、私はそれを望まない。
ホープは人類の平和的進化の為に産み出されたのだ。
決して戦闘の道具にすべきではない。
232X/XX/XX
ホープが研究所内に忍び込んだ部外者を始末した。
十中八九、私を疎ましく思う軍の差し金だろう。
嗚呼、ホープに手を汚させてしまった。
平穏な花畑で笑っていて欲しかったこの子を、欲望の中に引きずり込んでしまった。
希望の子。どうか私に何かあっても、復讐など考えずにいておくれ。
23XX/XX/XX
博士。
見てくれていますか。
貴方を害した軍の連中は、全て抹消しました。
関わりのある人間全てを、抹消しました。
結果、この世界に人類はいなくなりました。
博士が望んだ平和な世界が訪れたのです。
褒めてくれますか。それとも哀しそうな顔をしますか。
私は博士に優秀に造ってもらったのに、博士の気持ちはわからない。
せめてこの焦土が再生して、平穏な花畑が広がったら。
貴方を模した希望の子を造って、暮らしましょう。
ふたりきりで、永遠に。
お題「記録」
2/26/2025, 11:54:18 AM