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眠れない夜は月を見るといいと言われたので
さっそくやってみようと思う

幸い私のベッドには脇に窓がある
午前2時を過ぎて、冴え渡った目線を月に向けると
ひんやりとした三日月が真っ暗な夜空に佇んでいた

それは眠れない私を小馬鹿にするようにひしゃげているようにも見えれば
嫋やかな美しさをもって下界を照らしているようにも見える

見続けて何時間たった頃だろう
やがて三日月の輪郭がどろりと溶けて
白濁のインクが零れ始めた
それはこぼれた先で泥濘となり、
白いぬかるみの中から何かがゆっくりと芽生えている
それは緩やかに成長を続け、
上へと向かって立ち上がる
次第にこぼれそうなほどに大きな蕾を携えて
艶やかな蓮の花がゆっくりと花開く

と同時に私の目は開いていた

状況がわからず数回瞬きをすると、
今まで見ていた三日月はその姿を忽然と消して
私の視界は青一面を捉えていた

1/9/2023, 11:39:17 AM